GHz帯域のような高周波の検査を行う場合、標準的なコンタクトプローブは使用することができません。標準的なコンタクトプローブは細い金属の棒やバネから構成されており、直流や低い周波数の場合には電気はそのままスムーズに流れることになりますが、高周波の場合にはコンタクトプローブが電気的な抵抗(=インダクタンス)を持つようになり、信号が通りにくくなったり波形が崩れたりする、という状況が発生します。例えば真っ直ぐだった道が「透りにくい砂利道」に変わるようなものとイメージすると良いでしょう。
また標準的なコンタクトプローブの場合には電磁シールドが施されていないという面もあります。この場合、隣接するプローブ間において相互インダクタンスや浮遊容量(設計者が意図しない不要な静電容量)による結合が生じます。この点から、高周波信号が隣接するピンに漏洩・干渉してしまう「クロストーク」と呼ばれる状況が発生してしまい、測定精度が低下します。また表皮効果(高周波信号は周波数が高くなるに従い導体の断面を一様には流れず、表面に近いところに密集して流れ、中心部にはほとんど流れない現象のこと)によって抵抗値が増大することも、伝送損失につながります。このような現象が発生してしまった場合には正確な検査の実施が難しくなるために、「標準プローブは高周波の検査に向かない」とされています。
「同軸構造」とは中心導体(シグナル)の周りを、誘電体を介して外部導体(グランド)で包む構造を指しています。この構造にすることによって、外部導体がファラデーケージの役割を果たします。ファラデーケージとは、導体でできた器やカゴのことであり、外部からの電磁ノイズを遮断するとともに、内部の電磁波が外に漏れるのを防ぐ働きを持つものです。このような構造にすることによって、信号のロスを最小限に抑えられるようになります。
続いて、「インピーダンス整合」について説明します。高周波の信号は通り道の太さや材質が変わる場所に来ると跳ね返る「反射」と呼ばれる性質を持っています。この状態を防ぐことを目的として、信号の出口から入り口まで、電気的な通りやすさを「50Ω(オーム)」という値に合わせるように調整を行いますが、これを「インピーダンス整合」と呼びます。ちなみにインピーダンスとは、電気的な抵抗の大きさを表しています。 被測定物と計測器の間でインピーダンスが50Ωに整合されている場合には信号の反射が抑制されます。すると、高周波信号が伝送線路でどれほど効率よく伝送されているかを示す「電圧定在波比」を1に近い値に保つことが可能になります(電圧定在波比が1に近いほど整合が取れており、効率が良い状態を示しています)。この点から、伝送損失をできる限り抑えた状態で高精度な測定を行えるようになります。
高周波特性は、一般的にSパラメータ(回路に高周波信号を入れたときに、どの程度信号が反射・透過されるかを示す指標)によって評価が行われます。良好なSパラメータを維持するには、「短尺(プローブの長さを短くすること)」と、「インダクタンスを低減すること」の2点が重要になってきます。
プローブの全長は「電気長」として作用します。周波数が高い場合には波長が短くなるため、プローブの物理的な長さが波長に対し無視できない大きさとなり、位相回転や共振現象を引き起こす原因となります。このことから、プローブの短尺化を行って挿入損失を低減し、帯域幅を拡大させます。
また「低インダクタンス設計」とは、内部構造の最適化によって、電流経路をできるだけ短くかつ太く保つことを目的とした設計手法をいいます。余計な回り道をしないように、最短距離で太くスムーズに電気を流すことによって、信号の反射が発生せず、ロスなく相手に届く状態を維持できるようになります。
冒頭でも説明していますが、GHz帯域の検査を行う場合には標準プローブは適さないとされています。これは、クロストークの発生などにより測定精度が低下するため。この点から、信号精度を保証するには、同軸構造によってノイズを遮断することやインピーダンス整合、さらに短尺・低インダクタンス化によって反射による損失を防ぐといった、高周波専用設計が必要となってきます。この設計を用いることにより、高い精度での測定を行えるようになります。
